この本の主人公・志乃の恋の始まりはおおよそ一目惚れと言える。


特に会社員らしき男に心を奪われる何かをされた訳でもないし、志乃の好みとベストマッチだったという記述もない。


ただ単に、何気なく何度か来る男の手に必ず花が握られていることからそれに目が行き、それ故特別認識するようになり、いつの間にやら目で追うようになっているという・・・


なんとも曖昧な事運びだ。


女の恋なんて、こんなもんなのか?


ここでふと、唐突に、山越さんの事が頭をよぎった。


そういえば。


この本を貸してくれた山越さんは、何故俺に声を掛けたんだろう。


俺がいつも読んでいた本を知っていたから・・・というのがきっかけらしいが


この主人公と何となく重なる部分がある。


花と、本。


いや、しかしまだ山越さんが俺を好きかは分からないが。


うん、単純にちょっと話し合うかもと気になっている程度かも。


・・・と考えると、この主人公もまだ気になっているという段階なのだろうか。

「好き」と「気になる」の違いがよく分からない。



いつもの愛読書・長川探偵Hのような推理を推し進めながらの読み方になってしまう俺。


すんなりとページを捲れないのが癖だ。