………………




完全に娘の姿を視界にいれた美花だが

自分を見つめてくる紅色の瞳をみて

息が止まった。




しばしの沈黙。







「ひ…めか…!」



目の前には長年待ち続けた我が子。



これは夢だろうか?



触れたら弾けて消えてはしないだろうか?





不安を余所に

まるで幻でも見るように

そっと手をのばした手を

ギュッと握り返された。







「お母さん…」





初めて聞く我が子の自分を呼ぶ声に

長年溜まった心の刺が溶けていく気がした。






“お母さん”と呼んでくれた。






姫花を手放してから約10年間

ずっと心が引き裂かれる思いだった。