「おっとっと…」



両手いっぱいの花がぽろぽろとこぼれ落ちていて

ドアが閉まる前に見えた向こう側の長い廊下にも

通って来ただろう道筋にそって
キレイに軌跡となっていた。




姫花の存在はまだ気づいてないのか

花に埋もれていて表情が読めない。






「あの…」






そこまで言いかけて、

その先に続く言葉を探した。




ここ、どこですか?


あなた、誰ですか?





聞きたいことと知りたいことがありすぎて

一度言葉を止める。



「…………え?」




ピタッと足を止めた彼女からは

返事の変わりにバサバサと花の落ちる音が聞こえた。