近くで見ると、思っていたより長い睫毛にきめ細かく白い肌のワタベくんの顔に怯んでしまう。
「学生証…どこにありました?」
「自動販売機の近くに落ちてありました、ワタベくんに渡せてよかった」
「ありがとうございます内藤さん」

前田先輩は“レミちゃん”としか言ってないのに。それなのに苗字を覚えてくれていたなんて。きっと書類とかで確認してくれていたんだと思う。そんな小さな心使いがすごく嬉しい。
「私の名前、覚えてくれていてありがとうございます」
「あっ……そんな…」
柔らかい、空気が流れた。
「……ちょっと話してもいいですか」
ふと、ワタベくんが言った。
私は静かに頷いた。