僕のぽっちゃり彼女

「真樹くん・・・
ありがとう・・・」


「うん。」


真菜ちゃんは何も言わない。


俺も何も聞かない。



俺は@真菜ちゃんの過去を知っていた。
だから気付いてあげられた。


もし知らなかったら・・・


いや気付いてあげられたはず・・・?


でも千春さん、ありがとう。







俺は真菜ちゃんを家まで送った。


もう・・・震えは止まってる。


楽しそうに俺の話に頷いてる。



「じゃあ、またね。」


「うん。ありがとう。」


真菜ちゃんはニコッと笑った。


これ、この笑顔!!


俺はこの笑顔が見れただけでも
今日は最高にうれしい。







それから毎日、真菜ちゃんとメールした。


その日に打てば必ず返ってくる。
二日ぐらい返ってこない頃とは違う。


俺もそれだけ近い存在になった。
ってことかな?



「真樹くん、おいしいイタ飯の店があるの、
今度行かない?」


「うん。もちろん。」


こんな風に真菜ちゃんからも
誘ってきてくれる。



俺はそれが本当にうれしかった。




そんなある日、ご飯を食べて
いつものように真菜ちゃんを
家まで送った。


「いつも送ってくれてありがとう。」


「うん、じゃあまた。」


「うん。またね。」


俺はそう言って真菜ちゃんに
軽く手を上げ、車を走らせた。


そしてしばらく走らせると、
突然車の前に人が・・・


「危ない!!」


俺は急ブレーキを踏んだ。



「あぶっ・・・んん!?
千春さん!?」


車の前には千春さんが立っていた。


「どうしたんですか?」


俺は急いで車を降りて
千春さんに駆け寄った。



「千春さん!! びっくりしましたよ!!
ケガはないですか?」


千春さんは何も言わず突っ立ってる。


「ちは・・・?」


千春さん・・・


千春さんは目にいっぱいの涙を溜めて、
抜け殻のようになっていた。


「千春さん・・・
どうしたんですか?」


俺はそっと千春さんの肩を持った。


「うっっ・・・」


千春さんの瞳からは
ボロボロと涙が流れ落ちた。


「千春さ・・・」


ガバッ!!


千春さんは俺の胸に飛び込んできた。



「ううっ・・・」


千春さん・・・


何も言わずに俺の腕を強く掴んで、
千春さんはただ泣いていた。











どれくらい泣いただろう。


千春さんはそっと俺の胸を離れた。


「千春さ・・・ん。」


「ごめんね、いきなり。」


「いえ・・・ どうしたんですか?」


俺が顔を覗き込むと、
千春さんは背中を向けた。













「なんだろうね・・・」


「えっ!?」


「情けないよ・・・」


千春さん・・・


千春さんの背中がなんだか小さい。
俺は宮本先輩と何かあったんだと悟った。



「ねぇ、真樹くん。
ちょっと時間ある?」


「えっ!? は、はい・・・」


「ちょっと付き合って。」


そう言うと俺の方を振り向き、
涙目のまま笑った。


その笑顔がなんだか痛かった。




俺と千春さんは少し車を走らせて、
近くの公園に行った。


千春さん・・・
何を思っているんだろう?


千春さんは一言もしゃべらず
外の景色をずっと眺めてた。



俺は公園の駐車場に車を止めた。


「千春さん、着きました。」


俺がシートベルトを外し
ドアノブに手をかけた時、


「待って!! ここでいい。」


千春さんは俺の左腕を掴んだ。


「あっ、はい・・・」


俺はドアノブにかけた手を離した。