「最低!!」
そう言って去って行く幸恵。
幸恵・・・待って・・・
真菜は倒れこんだまま泣いた。
私がもっと強ければ・・・
私がもっとしっかりしてれば・・・
何度も何度も後悔した。
それから真菜への嫌がらせが始り、
真菜は学校へ行けなくなってしまった。
◇◇◇◇◇
「真菜はなんとか卒業したけど、
短大は地元を離れた。
地元に真菜の居場所はなかったの。」
俺はその話に怒りが込み上げてきた。
「タケルは? 真菜ちゃんを
かばわなかったんですか?」
「かばうわけないわ。
幸恵ちゃんを失いたくなかったんだもの。」
「なんだそれ・・・」
拳を握り締めて怒りを
必死に抑えてる。
真菜ちゃん・・・
「真樹くん、あなたに真菜を変えられる?」
怒りに震える俺に
千春さんは冷静な口調で言った。
「俺に・・・?」
俺にそんな真菜ちゃんを変えられるのか?
でも変えたい。
たとえ俺が彼氏じゃなくてもいい。
真菜ちゃんがまた男を信じれるなら、
恋を出来るなら、俺は何だってする。
真菜ちゃんみたいないい子が
恋愛しないなんてもったいないよ・・・
男がみんな怖いわけじゃないんだ。
真菜ちゃん、俺は怖くないよ・・・
「でも、真樹くんには
少し心を開いてるみたいね。」
「そうですか?」
千春さんはそう言うと、
少しやわらかい表情を見せた。
千春さんに、実の姉に
そう言われるとうれしくなる。
千春さん、今の笑顔は
昔の笑顔のそのままだ・・・
「真樹くん、真菜を幸せにしてあげて。」
「はい。」
俺は笑顔で答えた。
俺がリビングに戻ると、
「おかえりなさい。」
そう笑顔で迎えてくれた真菜ちゃん。
やっぱかわいい・・・
真菜ちゃんは俺が変える!!
「真菜ちゃん、今度の日曜日は暇?」
「えっ!? うん。」
「オムライス食べに行こう。」
「うん。行く行く!!」
よし!!
俺は日曜日、真菜ちゃんとオムライスを
食べに行く約束をした。
日曜日・・・
待ち合わせ場所は駅の噴水前に4時。
俺は車で前まで迎えに行った。
「真菜ちゃん、こっち!!」
俺は車のウインドウを開け、真菜ちゃんに手を振った。
「あっ、うん。」
真菜ちゃんは、少しびっくりしたような顔をしながら走って来た。
「どうぞ!!」
「お邪魔します。」
真菜ちゃんは少し遠慮がちに車に乗った。
「ごめん、待った?」
「ううん、今来たとこだよ。
まさか、車だと思わなかったから、
びっくりしちゃった。」
「言ってなかったかな? ごめんな。
車でしか行けないとこでさ。」
そう言いながら俺は、オムライスの店へと車を走らせた。
「ちょっと早いけど、店行こうか? 夜は混むからさ。」
「う、うん・・・」
特に会話もない車内。
まぁ、口下手な俺にはよくあること。
けど、何か違う。
緊張とか、そんな空気じゃない。
俺は運転しながら横目で真菜ちゃんを見る。
なんか落ち着きがない様子。
どうしたのかな?
俺は不思議に思ったけど、
その意味に解らずにいた。
10分ぐらい車を走らせ、
目的のオムライスの店に着いた。
「着いたよ。」
「うん。」
二人は車を降り店へ入った。
ガラガラッ。
扉を開けると、オムライスの
酸っぱい匂いが二人を包んだ。
「いい匂い!!」
真菜ちゃんの顔はパァッと明るくなった。