「もうなんなのよ!ヴァレンタインなんて大嫌い!楓も知らない!」


人通りが少ない路地に入ったのを確認して、とりあえず一声叫ぶ。なんとなくすっきりしたものの、それが情けなくて。


「そうだよねー、ホントあたしもそう思う!ヴァレンタインなんて大嫌い!」

「…………え?」

「あ、すごい!この子あたしのこと見えてるー!ね、見えてるよね?あたし、利真だよ!16歳っ。って言っても死んじゃってるんだけどねー」

「………ええ!?」


きんと頭に直接響いてきたような高い声がいきなり聞こえて、あたしが思わず顔を上げれば、目の前に嬉しそうに目をくりっとさせた可愛らしい女の子が立っていた。
……否、正確には浮いていたのだけれど。