「あなた」


笑顔で年賀状を差し出す妻。




それを受け取り、視線を這わせる。


途端、僕の頬も緩む。







差出人は、赤島先輩だった。


家族三人が笑顔で写っている年賀状。



正月の挨拶が印字された下には、先輩特有の右上がりの手書きメッセージ。




“家族全員、無事に笑顔で年を越せる事、宗久に感謝を伝えても伝えきれない。これからは前を向いて歩いて行こうと思う。貴志の為にも”






笑う、家族。

これこそが貴志君の望んでいた姿。




良かった。

本当に良かった。








「赤島さん、お元気になられたのね」


僕の隣、年賀状を覗き込みながら、妻が安心した様に胸を撫で下ろす。



「ええ、元気になれた様ですね」





先輩達は、きちんと貴志君の意思を理解してくれている。

それだけで報われた感じだ。



ただ、幸せであって欲しい。

日常を、時間を、慈しんで過ごしてくれたなら。







「あら…赤島さん、下のお子さんは女の子でしたのね?」

「見ますか?」


僕の手から年賀状を受け取り、妻はじっと見つめている。


いや、睨んでいる?