年末は慌ただしく過ぎた。

『あなた』
『宗久さん』
『お父さん』


代わる代わる呼ばれて過ぎた様な感じだ。




それでも家族全員、無事に年を越せた事は、この上ない幸せなのだろう。





母が縫ってくれた着物は、僕が丈を合わせるまでも無く丁度であった。


さすがだなと感心する。






新しい着物。

妻と母が作った雑煮にお節料理。

お年玉にはしゃぐ息子。




この当たり前の様に過ぎる日常が、幸せなのだ。





だが僕は、思わず一つだけ個人的な幸せを望んでしまった。




家族全員で向かう元旦参り。

手を合わせる妻を横目に、祈った事。




『女の子供が欲しい』





女の子特有の舞ちゃんの愛らしさに捕われてしまったのだろうか。




あなたは何を願いました?との妻の問いに、いつもと同じ事を…と答えるしか無かったが。










そうして正月も二日目になり、穏やかさを取り戻した頃。

息子が出してきた玩具で共に遊んでいた時だ。


ポストを見に行った妻が、年賀状の束を座卓に置く。



差出人を確認していた妻が、一枚の年賀状を手に微笑んだ。