ここだっけ…。

閑静な住宅街に
ポツンと立つ小さなアパート。



あたしは再び携帯を開いて香苗の家の前に立つ。

静かなアパートに
人が居るような気配はなかった。




どっかに出掛けてるのかな…。


発信履歴には
さっきまで話してた大輔の二つ下に香苗が表示されていた。




プルル……


受話器から聞こえた呼び出し音。



あれ?


携帯をあてていた耳とは反対の耳に
流れ込んで来た某歌手の着うた。



何だ、居るんじゃない。


終話ボタンを押すと
それとほぼ同時に
アパートの中から聞こえた着うたも途切れる。




ピンポーン…


「香苗?居ないの?」

呼び鈴を鳴らし
少し大きな声で発した言葉に

バタバタという騒がしい音があたしに聞こえた。