「香苗…よかった…。」


この涙は
今までみたいな悲しい涙じゃない。


香苗の笑顔が
とても嬉しくて。




だからこぼれてしまったの。





「海音ったら、赤ちゃんみたいだね。」


背中をさすり
細い腕であたしを抱き締める香苗は
少し体を離して

「海音。話があるの。」

そう言って
少しだけ眉を下げて微笑んだ。




窓から吹く風が
白いカーテンをゆらゆらとはためかす。



「海音…。今までごめんね。」

「……え…?」


泣きやんだあたしは
思いがけない香苗の言葉に目を丸くした。



「何で香苗が謝るの?謝るのはあたし…」

「違うの。」


香苗はあたしの言葉を遮って
真っ直ぐに視線を向けてくる。


「違うの。」

そして重ねた手のひらをぎゅっと握り締めた。