命は取り留めたものの
香苗の手首に刻まれた深い傷は
もう、一生消えないらしい。
一体
あたしはどれくらいの悲しみを
背負ってゆけばいいのだろう。
どれだけ涙をこぼせば
この罪は許される?
「…香苗……。」
握り締めた手に
返事などなくて。
「香苗……っ!」
冷たい病室の外で
生き急ぐように蝉が鳴いていた。
「香苗ーっっ!!」
これ以上
あたしに
何を求めて居るの?
傷付けたかったんじゃない。
こんな終わりを望んだ訳じゃない。
あたしはただ
幸せになりたかった。
香苗みたいに
ちゃんと人を愛してみたかった。
なのに
どうして?
あたしの恋は
こんなにも
傷つかなくちゃいけない恋だったのですか?
「…香苗…っ!」
ならばいっその事
あたしを消して下さい。