白い壁に
白い白衣。
全てが白で覆われたこの場所は
独特の匂いと
張り詰めた緊張感が
やっぱりあたしは好きになれない。
香苗の言葉が耳から離れなくて
あたしはソファーになだれるように座り込んだ。
『さっき警察から電話来て……。
出血が……酷くて…っ。』
呆然と立ち尽くすあたしに
香苗は途切れ途切れに言葉を繋げていく。
『……重傷だって……。』
そこで電話は切れた。
いや、あたしが切ったんだ。
信じたくなくて。
そんなの、絶対人違いに決まってる。
そう言い聞かせて
再びタクシーを捕まえたあたしは
そうくんが運ばれたと香苗が言っていた病院を目指した。
そして過ぎ去る景色に涙を殺して手を合わせる。
まるで
祈りを捧げるように。