全てが夢だったら
どんなに嬉しいだろう。
目覚めて
今の現実が夢だと
誰かがそう言ってくれれば
あたしは間違いなく信じると思う。
誰でもいい。
誰でも構わないから。
嘘だと言って下さい。
『海音……っ。』
「香苗!?あたし今、××海岸来てて…。」
長い海岸からようやく広い通りに出たあたしは
鳴り響く携帯に足を止める。
相手は香苗だった。
『……ぅちゃんが…。』
「何?ごめん、聞こえなくて……。」
途切れる事のない車の列に
タクシーを見つけたあたしは手を挙げた。
『そうちゃんが……。』
「え……?」
『バイクでトラックに跳ねられて……。
意識不明だって……。』
スルリと落ちた腕に
タクシーが目の前を通り過ぎた。