海………?


あたしの傷が疼き出す。




「…そうちゃん、よく一人で海を見に行くの…。


だけどあたしは一度も連れてってくれなくて…。」





『海の音、俺大好き。』


淡く蘇る思い出。




まさか―――…



「……海音、心当たりあるの!?」


何かを考え込むあたしの様子に
香苗が再び掴みかかって来た。




「……わからない…。そこに居ないかもしれないし…。」


だけど―――…




「海音……?」

突然立ち上がったあたしに香苗が不安の声を漏らす。



「探して来る。居るかわからないけど…。」

「じゃああたしも…!」



そう言って立ち上がった香苗に
あたしは静かに首を横に振った。