時計の針が音を立てながら時を刻む。


まるで
あたしを焦らすように。





「香苗、聞いて。」

深く深呼吸をしたあたしは香苗の肩を持ち上げた。



「やめて!!触らないでっ!!」

「香苗っ!!」


あたしの大声に
香苗の肩がビクンと上がる。



「落ち着いて。あたしは知らない。そうくんはここには来てないよ。」


冷静な言葉で香苗にそう告げる。


だけど本当は不安でたまらなくて。



「…じゃあ…。」

涙目の香苗は
あたしを見上げて言葉を探す。



「そうくん何か言ってなかった?昨日、どこに行くとか。」

「……昨日…?」

「何でもいいから。思い出して?」



あたしの言葉に
思い返すように考え始めた香苗は


「……そう言えば、海が見たいって言ってた…。」

と涙を拭きながら小さく呟いた。