嬉しい気持ちもほんの束の間で
しつこく呼び掛けるインターホンに
玄関へと駆け付けた。
「どちらさま……。」
扉を開けると
むっとした夏の風が家の中に入り込む。
そしてあたしの心は跳ね上がった。
「……香苗…。」
そこには泣き腫らした顔の香苗がいて。
「…そうちゃんは?」
「え……?」
突然のその訪問に
あたしは扉のドアノブに手を掛けたまま
呆然と立ち尽くす。
「そうちゃんは!?」
急に声を荒げた香苗は
乱暴にあたしを退けて家へと上がり込んだ。
「ちょ、ちょっと、香苗?」
慌てて香苗を追い掛ける。
それは
まるで何かが起きる前触れのように
あたしの心を掻き乱してゆく。
「香苗!」
そう。
それは夏の幻のように。