昔、あたしは自分の誕生日が嫌いだった。
夏休み中だという事もあり
小さい頃、友達が
『おめでとう。』なんて言ってくれるはずなんかなくて。
新学期を迎えてから言われる
『おめでとう。』は
ちっとも嬉しくなかったのをよく覚えている。
「…ありがと…。」
携帯なんていらない。
そう思ってたけど
携帯越しから『おめでとう。』と言われるのは
やっぱり嬉しかった。
『今日はね、雅美もあたしも夏期講習だから遊べないんだけど、明日二人とも暇だからさ!
明日は海音空いてる?』
「うん、大丈夫。」
温かくなる心に
香織との会話が弾む中
゛ピンポーン゛
と家に鳴り響いたインターホン。
「あ、香織ごめん!誰か来たみたい。」
『そっか!わかった!じゃあまた後でメールするね。』
「うん、本当にありがとね。」
笑顔のまま
あたしは携帯を閉じる。