夏の生温い風が
べたついた肌に髪の毛を絡みつかせる。
まるで
解けない糸のよう
あたしを縛りつけて離さない。
「行こ、海音!」
「……うん。」
それでも
あたしは、前に進まなくちゃいけない。
「どこで食べる?海音は何か食べたいのある?」
「…あたしは何でもいいよ。二人に任せる。」
進まなくちゃいけないんだ。
二人の並んだ姿が
頭の隅でちらついて。
だけどもう、泣いたりなんて出来なかった。
今が辛くても
きっと、いい事があるはず。
自分にそう言い聞かせて。
「じゃあ豪華に焼肉!」
「海音、それ豪華すぎぃ!」
夏の陽炎に
二人の姿を歪ませた。