せっかく前に歩き出しても
打ち寄せる波のように

すぐに引き戻される。





どうして
あたしを手放してくれないの?




どうして―――…






「…音!海音ってば!」

「え、あ……。」



呆然とする視界に雅美があたしを覗き込んでた。


慌てて我に返ると
前に見えていた香苗とそうくんはもう居なくて。




「香苗、さっきあそこの門曲がったよ。」

「声、掛ければよかったね。」

「え~、邪魔しちゃ悪いでしょ!せっかくのデートなんだし。」



そんな会話を交わす二人を尻目に
あたしは安堵の溜め息を漏らした。





よかった……。
あのまま鉢合わせていたら

きっと、心が保たなかった。





二人の並んだ姿を
受け入れるなんて…。




今のあたしじゃ
絶対に無理だ。