慌てふためくあたしに
彼は続けて口を開いた。



「別に今すぐ答えてくれなくてもいいから!

……少し考えてくれないかな。」


「…う、うん。わかった…。」



あたしの返事に
ほっとしたような顔を浮かべて
彼は教室を出て行った。


あたしは呆然と立ち尽くしたまま
その場から動けない。




嵐の後の静けさ。
とでも言うのだろうか。



「はぁ……。何やってんだろ、あたし…。」

別に迷ったとか
彼が気になるとか
そうゆう事じゃなくて。





どうすれば
彼を傷付けないように断れるのか
あたしは悩んでいた。





誰も居ない教室に
外から響く野球部の声。




「……帰ろ…。」


カバンを持ち直したあたしは
学級日誌を提出する為に教室を去った。