一昨日
急にお母さんが渡して来た携帯電話。



「連絡取れないと心配になるから。」

そう言ってあたしに何も言わず買って来たのだ。




デザインも形も
正直、あたし好みじゃなくて。



だけど、お母さんが一生懸命選んだと思うと
やっぱり素直に嬉しかった。







――すっかり日が伸びた初夏の校舎。


まだ太陽は顔を出したままだ。




「沖村。」


ガランとした教室にあたしを呼ぶ声。

振り返ると浦吉が扉に寄り掛かっていた。




「ちょっと時間あるか?」


「…うん。」



あたしは言われるまま
カバンを肩に下げて浦吉の背中を追う。






浦吉が
何をあたしに伝えようとしてるのか



何となくわかっていた。