――――…




「おかえり。随分遅かったわね。」

「……ごめん。ちょっと友達の家行ってた。」



まだ雨で湿っているローファーを雑に脱ぎ捨てて
お母さんの横を通り過ぎる。


明かりの付いたリビンクにお父さんの背中が見えた。




「お姉ちゃん!雑誌借りてるよ!」


部屋へと戻る途中
妹が自分の部屋からひょっこりと顔を出して笑顔を見せる。


「ちゃんと戻しておいてよ。」

「わかってるって!」




変わらない夜の光景。

ごく普通の日常。




なのに
あたしだけ
この世界に一人っきりみたいで。



暗い部屋に
月明りが照らし出す。





散らかった部屋にカバンを放り投げて
制服から部屋着に着替えた。




そしてベッドへと潜り込むあたし。



全てを拭い去るように
固く目を瞑った。