『……どうして…。』


電話の向こうから聞こえた小さな掠れた声。

海音……。

名前を
呼んでしまいそうになった。




だけど―――…


「……そうちゃん…?誰…?」


俺に近付いて来た香苗は
海音に聞こえるように尋ねて来た。



まるで
俺を試すように。


ぎゅっと携帯を持つ手に力が入る。




「…間違えみたい。香苗は寝てろよ。」


そう言って俺は電話を切った。

そして香苗に突き返す。






「……そうちゃん。眉間にシワ寄ってる。」

「…んな事ねぇよ。」



俺は立ち上がって台所に向かった。


心が
潰れてしまいそうで。




だけどこれは香苗への

せめてもの償いだ。






俺の全てを
香苗に捧げよう。






だから
どうか神様。



これ以上
俺に海音を傷付けさせないでくれ――…