怖かった。
香苗の言葉一つ一つがあたしの胸を貫いて行く。
「体の傷はすぐに治る。だけど心の傷はもう治らない。」
香苗はあたしの前に座り込んで言った。
「でも感謝してるよ。おかけでそうちゃんがまた傍に居てくれるの。」
嬉しそうに微笑む香苗が月明りに浮かんだ。
「あんたなんかに…。」
立ち上がった香苗が歩き出し
振り返った。
「あんたみたいな裏切り者にそうちゃんは渡さない。」
「……香苗…。」
「体、お大事に。」
そう言って香苗が暗闇に溶けて行く。
追い掛けようにも
体が鉛のように重たくて
あたしはベンチに倒れ込んだ。
『裏切り者』
香苗の言葉が
あたしの脳裏に焼き付いて離れない。
「…っどうして…。」
涙が止まらなかった。