「沖村さんっ!」



どのくらいそうしていたのかわからない。


看護婦さんが傘を差しながら走り寄って来た。




「何してるの!ほら、戻りますよ!」


ぐいっとあたしの手を引いて
肩を抱えるように病院の中へと足を踏み入れる。



「やだ、びしょ濡れじゃない!」

「誰かタオル持って来て!」



他の看護婦さんも駆け付けて
慌ただしい足音が廊下に響く。



「あ、ちょっと!沖村さん!?大丈夫!?」

ズルリと崩れ落ちるあたしに
看護婦さんがタオルを掛ける。




ぼーっとする頭に
声が反響してゆく。


『沖村さん!』



遠のいていく色んな人の声。





だけどあたしの脳裏にはあの声がこだましてた。




『香苗は寝てろよ。』


どうして
そうくんが香苗の携帯に出たの――…?