奇跡かと思った。
幻かと
本気で自分を疑った。
「海音ちゃん?」
「………そう…くん?」
香苗と別れて
何だか帰る気になれなかったあたしは
騒がしい街の中
ただ歩き続けていた。
まさか
こんな所でそうくんに会うなんて―…
「一人?」
「え?あ、うん!」
吹き付ける風は冷たいのに
あたしの体は熱い。
熱でもあるんじゃないかと思ってしまう。
そんな自分を隠すように
「そうくんは?一人なの?」と出来るだけ自然に尋ねた。
「うん。さっきまで友達と居たんだけど帰って来ちった。」
ははっと笑うそうくんに会うのは
夏休みに香苗とバッタリ会った時以来。
あたしの心が壊れたように激しく動いてる。