大輔が去った病室は
少しだけ心が寒くて
あたしはぼんやりと窓の外を眺める。
お腹に手をあてた。
もうここに
小さな命はいない。
直接誰かに言われた訳じゃないけれど
何となく、そう感じてたんだ。
「体調はどう?」
「…お母さん…。」
静かに扉が開いて
お母さんが手提げを持って入って来た。
軽く体を起こすと
「まだ寝てなさい。しばらく入院するんだから。」
とお母さんがあたしの肩を押した。
あたしは再びベッドに寄り掛かる。
何も言わず
あたしの身の回りを整理するお母さんの横顔に
少しの疲労が見え隠れした。
「……お母さん。」
「…なぁに?」
「ありがと。ごめんね。」
いつもなら
絶対に言えないのに
今日は何故だか素直に言えた。
そんなあたしに少しだけ驚いて
「何よ、急に。変な子ねぇ。」
と照れたお母さん。
ありがとう。