「お母さん、あたし…!」
勢いよく起き上がると体中から痛みが走り抜けた。
掴みかかったお母さんの肩越しに
酷く懐かしいその人。
「大輔……。」
遠慮がちに壁に寄り掛かる大輔は
俯いたまま目を合わせようとはしない。
「海音。」
お母さんが優しくあたしの手を肩から離して言った。
「お母さん、先生とお話して来るから。少し二人で話しなさい。」
お母さんの手がするりと離れて
背中が遠ざかる。
白い病室に
大輔の横顔が小さく揺れた。
そして少しずつ近付く距離に
大輔はベッドの横にあるパイプ椅子に腰を降ろした。
大輔が
何を言いたいのか
何となく感じてた。
だからこそ
あたしは口を開けないまま
冷たい布団に視線を落とす。