「よし。じゃあ、俺は帰るかな。」
「え!?交換条件は?」
カバンを手に扉へと歩き進める浦吉は
振り返ってこう告げた。
「田村と、ちゃんと向き合って来い。この先の未来はそれから考えても遅くないだろ?」
「香苗と…?」
「まぁ、難しいかもしれないけど。」
微笑んだ浦吉は
ドアノブに手を掛けた。
そして――…
「みんな心配してんぞ。」
と捨て台詞をはいて階段を降りて行った。
パタンと閉まった扉の向こうから
お母さんと浦吉の声が聞こえる。
「何よ、それ…。全然自分に得な交換条件じゃないじゃない…。」
浦吉の面影に
あたしは窓の外に視線を映して笑った。
ありがとう、浦吉。
あたし、頑張ってみる。
眩しい春の太陽が
あたしを優しく照らしていた。