全てを捨てる覚悟は出来ていた。
小さなお腹の中の命は
既にあたしの中で揺るぎない存在感を示していて
触れる度に思った。
強く、強くなろう、と。
そんな刹那、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「海音、浦吉先生が来て下さったわよ!」
お母さんの声が
少しだけ裏返った。
え?
浦吉?何で?
突然の浦吉の訪問に
あたしは慌ててパソコンの電源を落とした。
「おーい、入るぞ。」
「ダ、ダメ!!」
あたしの反抗も虚しく
開かれた扉にあたしはクッションで顔を隠した。
「何してんだお前。」
いつもと変わらない
先生ぶる浦吉の声。
「あ、お母さん。すいません。二人にしてもらえます?」
浦吉の言葉で
素直な生徒のようなお母さんは階段を降りて行った。