喉の奥がカラカラで
指先がうまく動かなくて本が上手くめくれなかった。
字が、ぼやける。
パタン…と閉じて
あたしは本屋をあとにする。
朝はあんなに蒼かった空は
絵の具で塗り潰したような灰色に変わってた。
次第に
灰色の空から激しく雨粒が地面を叩く。
予想だにして居なかった土砂降りの雨に
街行く人が足早にあたしを追い越していく。
あたしはゆっくりと
信号を渡りながら空を見上げた。
ドン!!
「すいません!」
後ろからぶつかって来た人に
あたしは地面に倒れ込んだ。
膝に
うっすらと血が浮かぶ。
立ち上がったあたしは
ゆっくりと再び歩き出した。
残酷な世界に降り注ぐ
冷たい絶望の雨に打たれながら。