スヤスヤと寝息を立てる香苗に
あたしはぼんやりと部屋の明かりを見つめていた。
手首に刻まれた
香苗の深い深い傷。
見る度に胸が締め付けられて
あたしは堪え切れずに唇を噛む。
泣き疲れた香苗は
まるで天使のように色白で
これから来る幸せを待ちわびてるんだ。
春の木漏れ日に似た
温かい幸せを。
やり場のない
あたしの心。
傷付いた香苗に
あたしは傷付いた。
何て
自分勝手なんだろう。
別れてしまえばいい。
そう思ったのは
一度や二度だけじゃなかった。
なのに
何であたしは傷付いてるの?
自分の身勝手さに呆れてしまう。
だけど
この悲しみの果てにいる香苗を
支えてあげられるのは
今、あたししか居ないんだ。