「落ち着いた…?」
「うん…ごめんね…。また海音に迷惑かけちゃったね…。」
「そんな事…ないよ。」
あたしの言葉に
無理に笑う香苗に胸が痛む。
そしてあたしは見てしまった。
香苗がマグカップに手を伸ばす。
その手首には
無数に浮かぶ切り傷。
「香苗!!」
思わず香苗の手首を掴んだ。
その拍子にマグカップが床に落ちてカーペットが汚れてしまう。
「これ……。」
唖然とした。
リストカットだ――…
慌ててあたしの手を振り払う香苗は
「見られちゃったか。」と少しおどけて笑った。
「……どうして…。」
どうしてリストカットなんて……。