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「どうしよう……」





あたし




あたし…山田に“好きじゃない”なんて言っちゃったよー




本当にバカ。




救いようがないくらいの大バカ。





やっと想いが伝えられたのに。




次の日、学校に行って、どうしようもなくモヤモヤしてきて




一人悩んでいると、優くんが話しかけてきてくれた。




「朱里ちゃん」




「あ、優くん!おはよう」



ニッコリ笑って見せた。




なのに、優くんは少し悲しそうな顔をして





「悠に好きじゃないって言っちゃったの?」





そう言うんだ。





「………うん。」




あたしは、気まずそうにうつ向きながら応える。




言うつもりなんて、なかったんだけど




ついね…





思ってもないことを、口走っちゃって、今、すごく後悔している。





でも、山田はなんともなかったように去って行っちゃって。




あたしのことなんて…





どうでもよかったんだよね…?











優くんはそんなあたしの気持ちを見透かしたように




「そんなことないと思うよ」




って。




「大丈夫だよ」




って、言うんだ。




でも、そんなこと言われたらあたしまた勘違いしちゃうよ。




期待しちゃうよ。





あたしバカだからさ…




「そうだといいな」




あたしは、そう言って優くんに笑って見せた。




すると、優くんは




「悠はさ、自分にも鈍感だけどさ、朱里ちゃんのことちゃんと見てる」





「………」





「親友の俺が言うんだから、間違いないよ?」





そう言って、笑う優くんに不思議なくらい気持ちが晴れた。




それと、同時に気づいたよ。




あたしはみんなに支えられてるんだって。




だから、山田を好きでいられるんだって。





今は、あたしが諦めちゃったら終わっちゃうような小さな小さな片想いの恋だけどね…?





きっと、終わりはしないよ。




ううん、あたしが終わらせない。





いつか大きくなって




この恋が実る、その時まで




あたしはキミを諦めない。















「ありがとう、優くん!大好きっ」





そう言ったあたしに、丁度登校してきた可奈が慌てて優くんとあたしを引き離す。





「優くんだけはダメー!」





もう、油断も隙もない、と怒る可奈にあたしと優くんは笑った。







「可奈も大好きっ」





「奈都もー」




みんなみんな




大好きだもん。





みんなに抱きついたあたしに、みんな優しく抱き返してくれた。





そんな、あたしを愛しい人が呼ぶ声。





「……俺は?」





ニカッと子どもっぽく笑う山田。






もちろん、大好き。




大好きなんだよ。





こんな、あたしの背中を3人が押してくれる。





「ほら、朱里頑張って」




「朱里、大丈夫」




「朱里ちゃん…悠が待ってる」








あたしはコクりと頷いた。




ちゃんと、話そう。





ちゃんと、山田に全部話そう。












いざ、山田を前にすると





言いたいこと





伝えたいこと






たくさんありすぎて、なにから話したらいいかわからなくなる。





「あ、あたしね…」





「なぁ」






迷っているあたしを、真っ直ぐ見つめて口を開いた山田。






「…な、に?」




「俺から話してもいい?」



「え?……うん」






首を縦に振ったあたしに、山田はこう告げた。
















「俺、ずっと好きだったやつから告白された」





と。











「………え」





頭の中は真っ白になって。


息が出来ないほど苦しくなって。



目頭が熱くて、ガンガンする。




「それで…」




「いやっ…!」




話し続けようとする、山田に堪えられなくなった。




聞きたくない。




そんなの聞きたくない。





「朱里…!」




あたしは、気づくと走っていた。





嫌……




「朱里…!待てって!」




グイッと腕を引かれ立ち止まる。




なんで…?




なんで、こんなときに追いかけてくるの?





「何も…聞きたくない!」








苦しくて




苦しくて






「嫌なの…


山田が他の人を見ているのも……


他の人に触れているのも…

話しているのだって嫌なの…」









苦しくなって



泣きたくなって





「朱里…」





それでも



山田に恋していて



ときめいて



ドキドキして






「山田が好きなの…」







好きすぎるよ。













「だから…絶対に諦めたくないんだもんっ」





あたし…




山田に諦めてくれ、なんて言われたら立ち直れないよ……






「朱里、最後まで聞けって…」





「いいもん…っ!山田が誰を好きでも…」





こうなったら、開き直ってやる…!





「シワシワのおばあちゃんになったって、ずーっとずーっと諦めないもん…!」





あたしを見てくれなくたっていいもん…





そう思うのに、どうしてこんなに涙が溢れて止まらないんだろう。




「……っ…」




どんなに強がったって





やっぱり、山田が好きで





好きで








「好きになって欲しかった…っ…」







あたしを見て欲しかったよ……













「だー!わかったから…もう泣くなって」




泣きまくるあたしの頭を不器用に抱き寄せる山田。




「まだ、俺の話終わってないんだけど…聞いてくれる?」





そう言うと、あたしの肩に手を置いて目を見てくる。



その行動に恥ずかしくなって、俯くと山田はゆっくりと話し出した。




「…そいつにな、俺も、好きだって伝えた」





それだけで、逃げたくなる。




なのに、山田はそうはさせてくれなくて




あたしは、泣くのを我慢するしか出来なくて




「あたし…さ、諦めた方が…いい?」





こんなこと、聞きたくないのに…




こんな言葉しか出てこなくて…






苦しいよ………










ついに、泣き崩れるあたしを優しく山田が支えてくれて




優しく言ってくれた。




「諦めなくてもいいから…」





予想外の言葉に、涙は引っ込む。





「いいの……?」





あたし、まだ山田を好きでいいの…?




困惑するあたしに、山田は優しく笑うと





「もっと大切な存在に気づいたから」





もっと大切な存在。





「それって…」





「朱里のことだよ」





あたしのこと…