「…あいつらは、唯璃が自分達の前で話してくれるのを待ってる。遅いなんてことはないよ。言わなきゃいけないと思ってるなら言えばいい。」
翔先生はそう言って、私の頭に手をのせ、少し腰をおると目線を同じにした。
「あとは、言えるかどうかだ。」
真剣な瞳をむけてくる翔先生にしっかりと頷いた。
───不安とともに。
「…よしっ。」
「いだっ?!」
バシバシと私の頭を叩きながら、翔先生は満面の笑みを浮かべた。
「…まぁ、勧誘は失敗したけど、唯璃の決意は固まったみたいだからな!よしとする。」
───は?今、何て?!
「ちょっ、翔くん!勧誘って!?」
私は慌てて、聞き返した。
「おっ、翔くんって呼ばれるのは久しぶりだなー。」
そうニヤリと笑いながら、言ってきた翔先生の言葉を無視してもう一度、聞き返した。
「勧誘って!!何ですかっ?!」
「ぅお?!ゆ、唯璃こわっ!!分かった、言うから!!睨むな!!」
ずいっと下から睨み上げると、翔先生は引きつった笑みをむけながら話しはじめた。
「いや〜、実は、唯璃にコーチでもマネージャーでも入ってもらいと思ってさ。
そんな怒ることじゃないだろ?」
「私が、コーチ?!む、無理に決まってるじゃないですか。それに、今はやらないつもりなので…。」
驚いて大きな声をだすも最後の方は小さくなってしまった。
だって、やっぱり。
───誘われるのは嬉しいから。
私は、
本当はやりたいんだな。
陸上を……。