「…皆、とは…、あいつらか?」
翔先生が少し表情を和らげてそう言った。
「…そうですね…、……あいつらです。」
皆の顔が浮かんできて、少し切なくなったのはきっと気のせいじゃない。
「…あいつらは…。」
「…え?」
突然呟いた翔先生に、私はいつのまにか俯いていた顔を上げた。
「あいつらは…、気付いてるよ。唯璃があれだけの理由で去ったわけじゃないことを。」
翔先生が優しい表情で紡いだ言葉に私は目を見開いた。
「え…?」
「まぁ、内容は知らないと思うが…。理由があれだけじゃないってことは気付いてるよ。」
───気付いていた…?
皆は気付いてて、勝手に去っていった私に何も言わなかったの?
約束を破ることになった私に何も言わなかったの?
『信じてるからね…、唯璃を。
いつか…言ってくれるのを。』
逃げるように去ろうとした私の背中にかけられた言葉。
その言葉の意味に気付いて、はっと息を呑んだ。
──ああ、なんで私は…、
気付くのが遅いんだろう。
せっかく、言わなければならないと思うことができたのに。
もっと…、もっと早く言わなければならなかった。
「…なん、で…、私はいつも遅いんだろう…。」
なんで…、皆は、そんなに優しくしてくれたの。
私が、その優しさに気付くのはとても遅いのに。
胸が苦しくなって、やるせない気持ちになった。
思わず、俯いて唇を噛みしめる。
「遅いなんてことないだろう?」
その言葉に私はゆっくりと顔を上げた。