Γねぇ、あたしには?あたしには何て?」


莉子は何故か気になるらしく、俊の隣に行って顔を見上げる。


Γお前には何も言ってなかったぞ」

Γ冷たい奴だね…」


不貞腐れた様に呟き、莉子は頬を膨らませながら、またあたしの隣に並んで歩く。

駐車場に着き真っ黒のセダンに乗り込むと、俊はすぐに発進させた。


Γねぇ、アユまた帰って来なよ」


もうすぐあたしの家に着くと言う時に莉子は助手席から振り向きそう言った。


Γうん」

Γあたし寂しいんだから」


そう小さく呟いて前を向く莉子に、


Γ寂しいって俊が居るじゃん」


少し笑いながらあたしはそう言った。


Γそれとこれとはやっぱ違うじゃん。大和だって離れちゃうし…それに大和さ、アユの――…」

Γ莉子!!」


哀しそうな声で話して行く莉子の言葉を突然、俊は遮った。

その拍子で窓の外を見てたあたしはすぐに莉子に目を向ける。運転席の後ろに座っているあたしは助手席に座る莉子の顔がはっきりと分かり、莉子は不満そうに顔を顰めて隣で運転する俊をジッと見てた。


Γな、に?どうしたの?」


そう問い掛けた時にはもう遅かった。返事を聞く前に既に車はあたしの家の前で停まってて、


Γいや、何でもねぇ。アユ、また帰って来いよ」


そうあたしを早く帰らすかの様に俊は言葉を吐き出した。