見上げた先には左手をズボンのポケットに突っ込んだ男。
整った顔にサラサラした茶髪の髪をワックスで遊ばせ、肌けた胸元からはシルバーのネックレスが光っている。
…――大和(やまと)。
中学の時からの莉子の友達でもある。
「自分で取りに来いよ」
そう言った大和は手に持っていた雑誌を莉子の頭の上に叩きつけた。
「痛ったー!!」
「いらねぇのかよ」
「いるいる。サンキューね、大和」
莉子は大和から雑誌を取り机の上に置いた。
「お前…俺を足に使うんじゃねぇよ」
両手をポケットに突っ込んだ大和は不機嫌ながらにもそう呟き、莉子を見下ろした。
「ごめんって…ほら、半分だけどこのパンあげるから」
莉子はさっきあたしが少しだけ割ったパンを手に取り大和に差し出す。
莉子が差し出したパンに手を伸ばした大和は、
「これアユのんだろ」
そう言ってパンを掴んだ。