Γ今日はご馳走様でした。有り難うございます」


終電間際まで雄二さんと他愛ない会話をした後、あたしは店を出てすぐそう雄二さんに声を掛けた。


Γあー…全然。ってか、また誘ってい?」


ちょっと、ほんの少し戸惑い気味に言ってきた雄二さんにあたしは薄ら笑い頷いた。


Γじゃあ今度はもっといい店に行こうな」

Γそれじゃあまるであそこがいい店じゃないみたいですよ?」


駅までの道のりを歩きながらそう言って、隣に居る雄二さんを見上げた。


Γあ、いや…そう言うんじゃなくてさ。ほら、もっと高級店にさ」

Γじゃあ、あそこが高級店じゃない――…」

Γあー!!アユちゃんって結構、痛い所つくよな。つーかマジ、今度は別の所で」


そう言った雄二さんにクスクス笑い、それに釣られて雄二さんも微笑んだ。

環境の変化って凄いと思った。こんなに今まで笑った事なんてなかった。だけど今は職業柄、笑みを絶やさずにはいられない場所。

周りの人達が一気に変わればそれなりに笑えるのだと分かった。


でも、それだけじゃ何かが物足りなくて不意に沈む時がある。そんな時、ふと思う事がある…

雄二さんと居たら少しだけ、ほんの少しだけど落ち着く時がある。


それは何でかあたしにも分かんない。やんわりとした雰囲気がそうさせているのかも知れない。


あたしの空いた空間を埋める人は雄二さんなんだろうか――…