高校3年の夏――…
「ねぇ、アンの事、好き?」
「あぁ」
「アユよりも?」
「当たり前…」
薄い壁が塞がった隣の部屋から聞こえてくるのは、あたしの妹のアン。
甘ったるい声に混じって男と身体を重ねている喘ぎ声。アンにとってはこれが日常茶飯事。
その声を掻き消すように、あたしは布団に潜り込み両手で耳を塞いだ。
アンはいつでもあたしと比べる。自分のほうが上でいたいだけにあって、やたらあたしと比較する。
あたしとアユどっちが好き?
あたしとアユどっちがいい?
男に言う言葉は毎回これ。そんな妹のアンがあたしは物心がついた時から大嫌いだった。