Γ嘘、嘘。大和が払ってくれるから」
Γ俺かよ…」
俊の笑い声の後、一瞬にして笑みを消した大和は小さく呟く。
駅前通りの交差点に入ると5階建てのビルが目に飛び込む。
そのビルを見上げると赤色で“カラオケ”とデカク看板が掛けられている。
そのビルに入り、一番上の5階に辿り着くと大和と俊はカウンターへと向かった。
Γ一番奥だってよ」
暫くして大和と俊が待っていたあたし達の所まで来て、大和は親指を立てて一番奥を指す。
カウンターを挟んで左右に別れる通路の右手に進む大和達の後をあたしと莉子は付いていく。
歩く通路の左右の部屋から漏れてくる歌い声。
男の叫び声、女の笑い声。そんな楽しそうな雰囲気を実感しても、何故だか楽しめそうにないのはあたしだけだろうか。
何回か誘われて来たけど、いまいちあたしは“カラオケ”と言う所が好きじゃいらしい。
でも、莉子の為なら…
Γあー、何歌おっかなぁ」
そう言いながら、歩く莉子は気分上々。
…の、横にいるあたしは、やはり気分は上がらない。