大和は学年で1、2を争うほどのモテっぷり。さっきアンが一緒にいた男と争うほどの男。

後輩からも“カッコいい”なんて言われるくらい。


そんな大和に少しだけ好意をもたらした時だってあった。

そうさせたのは大和が優しいから。大和はあたしの事を“アユ”って呼んでくれる。


たったそれだけなんだけど。


でもあたしにとったら嬉しいんだ。殆どの人があたしとアンを間違える。

あたしを見た途端“アンちゃん”って言ってくる。あたしが“アユだけど”そう言うと“間違えた”って。

でも、あたしとアンにでも一つだけ見分け方がある。それは声。


アンは作ってるのか知らないけど甘ったるい声をいつも振りまいている。それに比べてあたしは落ち着いていてサバサバしているって莉子が言ってた。


今は誰にでも区別できるようにあたしが見かけを変えたから間違われる事はないけど、初めて大和に出会った時から、大和はあたしとアンを一度も間違えなかった。


そんなちっぽけな些細な事だけどあたしは嬉しくて、大和に惹かれてた。