先輩の家をでると、もう夜明けだった。

薄暗い歩道をテクテクと歩いていると、新聞配達のバイクとすれ違う。

もうそんな時間なのか、と過ぎゆく時間を歩くことで自覚した。

涼しい風だ、もう3月。

澄み切った空気のおかげで、自分の酒臭さもよくわかる。

自販機で買ったレモンティーが温かい。コートの両ポケットにペットボトルを忍ばせ、そこに手を突っ込んで温めながら帰路に発った。

家につき、鍵をあけようとしたとき、先輩からメールが入った。

「ところでお前、なんで俺ん家にいんの?」

…もういないし

ってか本当に覚えてないのか?

どうせなら、仙人か医者かどっちかだったかを書いた内容のほうが嬉しかった。

そんな気持ちで部屋に入ると、「おかえり」と優しい声が私を迎えてくれた。

「ただいま~」

雄二に抱きつきながら、私は酒臭い息のする自らの口を、彼の唇に重ねた…

つづく