ふすまを開けたら、そこはパラダイスだった。

「先輩、起きてます?」
「おお。いよぅ☆」

いよぅ☆

じゃねーよ。。。

タクシー捕まえんの大変だったんだぞ、ってか半額でいいから今すぐ金だせよ、タクシーの運転手にわざと違った道教えんなよ、その状態でコンビニ寄ろうとするんじゃねーよ、おいらより高いアイスかってんじゃねーよ

という思いが渦巻くなか、そのイライラをこらえて、おいらは平常心を保ちながら接した。

「あの、私、帰りますんで、おつかれさまでした」

と告げ、ふすまを閉めようとした瞬間だった。

「京都をねぇ…」

…はぁ?京都?

今先輩、京都って言ったよな??

「京都がどうかしたんですか?」

かわいそうだから、一応聞いてみてあげる。

「うん、京都をあげたの。全部」

スケールの大きい寝言だな…

「誰にあげたんですか?」

「お医者さんみたいな、仙人みたいな人~」

…だれだよ!?

つーか、どっちだよ!!

くっくっくっと笑いをこらえながら、面白れーなーと会話を続けてみる

「誰です?その人?」

「んー、ZZZ」

寝たーー!!この状況で寝たよこの人!!

その瞬間、おいらは先輩の布団を引っぺがし、胸をゆすった

「ねぇ!だれ!?だれなのっぉおお!!??」

気になる

所詮、寝言や夢かもしれない。だが、仙人や医者みたいな人ってだれだよ!?京都のどの辺からどこまであげたんよ??

「うっ…うわぁ!あぇ?ゆかりっち??」

残念、目をさましてしまった。これでは覚えていないだろう…

「あの、帰ります、飲み会からの帰りのタクシー代は後日、精算させていただきますんで、これで」

と言い残し、ぽかーんというか、ぼーっとしている先輩を置き去りにして玄関をでた。