「俺・・・晴子が告白してくれる前から・・・あいつのことが気になっていた」
ズキッ
あいつ・・・それは夏木さんだよね。
「あたしが告白したときも・・・圭は夏木さんを見てたんでしょ?」
あたしの言葉に圭は驚いた顔をした。
告白して、だいぶ経った後に気づいた。
人気者の圭が放課後の廊下を1人歩くわけがない。
圭は、あの時いた校舎の下の水道場に夏木さんがいたから、廊下にいた。
分かった瞬間、心が痛かった。
「・・・圭」
「ん?」
「幸せを掴んで?」
「え?」
「夏木さんと付き合えるように頑張って?」
「・・・」
「あたしも頑張るから。圭ではない人との幸せを掴めるよう頑張るから」
圭はあたしの目をじっと見る。
だから、あたしも目を逸らさない。
「夏木さんを彼氏から奪って、自分の幸せを見つけて?」
最後の圭への優しさ。
きっと、あたしは圭に彼女ができても『おめでとう』は言えないから・・・。
だから、圭にはこんなことしか言えない。
でも、あたしなりの最後の圭への想い。
あたしに負い目を感じずに自分の気持ちを伝えられるように。
そう、願いを込めたあたしなりの優しさ。