次の日の授業、思わずあたしは口に出てしまった。


「藤咲さんて…頭いいですよね…」


「今更何を言ってるんですか」

藤咲さんは笑った。


「執事で必要なものは皆心得てますから」


ふーん


完璧だよ。藤咲さんは。

なのに…どうしても昨日の家政婦さんの言葉を思い出してしまう。


「若いのに、まるで頭は教授みたい」

あおいはぼんやり呟いた。


藤咲さんは何も言わずに微笑んでいた。


「どうしたらなれるのかな…」


「勉強です」


「はあ…やっぱりぃ」


あおいは机に突っ伏し目を閉じた。


「あたしますます勉強嫌いになりました。一人きりだし気が抜けないしサボれないし」


足音が傍まで来た。


「ではこの近くのあおい様と同じくらいの歳のお嬢様を誘いましょうか?」


「やだ。絶対気が合わないよ」


「日本のお友達でないといけませんか」


「…はい」


我が儘だな、あたし。


こんな生活してるからかな…。


あおいはため息を吐いた。


その時、いつか感じた事のある感触がした。


あたしの頭に。


藤咲さんがまた、あたしの頭に手を乗せたんだ。