「あゆ…」
「何?」
「ちょっといいか?」
夜空に向けていた顔を、ゆっくりと貞永に向けた途端、あたしの胸がドキン!と高鳴りを始めた。
…貞永の表情が、いつもになく真剣だったから。
「…俺がハリウッドに行く前に出した宿題、覚えてるか?」
「宿題…?」
「ああ、宿題」
その言葉で、あたしの回想は過去へと遡っていく。
―――宿題。
それは、貞永はハリウッドに旅立つ前、あたしの耳元で囁いた、永遠の課題。
―――「さっきキスはしてないって言ったけど…実は一回だけした事があったんだよな。
それはいつの出来事かを思い出すのが、あゆの宿題。
俺が帰ってくるまでに、キチンと思い出しとけよ?」―――
.