「俺はいつでも出来てるよ、その準備なら」
冬馬は小さくそう呟くと、あたしに向かって、ニッコリ笑顔を見せる。
その笑顔は、さっきのような作り笑顔ではなく、心の底から笑っているような、本物の表情で。
いつもの冬馬に戻ったんだ…と、少し安心した。
「俺の気持ちは、完璧な一行通行だって分かってる。だけど、俺は蘭を支えてやりたいから」
「冬馬…」
「蘭の一言で、俺は変われたんだ。だから今回こそは、好きなヤツを手に入れたい。…例え、俺がどれだけ苦しんだとしてもね…?」
天井に向かって手をかざして、グッと力を込めるように、握りこぶしを作る。
そんな動作をする冬馬は、今までで一番、男らしく見えた。
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