つい最近冬馬から聞いた話だけど、既にその時、蘭は貞永があたしの事を好きだった、という事を勘付いていたらしい。
…蘭の鋭い観察力から分かった事だと思うけど。
「その言葉があってから、嘘のように心が軽くなって。あゆの事も引きずる事もなくなっていったし、仕事も失敗する事がなくなって…」
「それで、段々と蘭の事が気になっていったんだ?」
「うん。俺を変えてくれた、たった一人の大切な人をね…?」
自分の想いを伝え終えた冬馬は、ホッとしたように目を閉じた。
…やっと話してくれた。
高校の時から、ずっとそうだった。
人の心配ばかりして、自分の事なんか顧みない冬馬。
悩みがあっても、苦しんでいる時も、いくら問い掛けたって、その内容を打ち明けてくれる事などなかった。
そんな冬馬が、あたしに初めて悩みを話してくれた。
頼りにしてくれた。
それだけで、あたしの心はいっぱいになっていく。
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